ワークライフバランスよりストレスフリー生活を求める女性たち
2018/11/1
「仕事も大事だけど、私生活のスタイルを崩したくない。」
働く女性はそう思い、ワークライフバランスを重視している。誰もがそう考え、働き方改革は進んできました。女性の就労なくして、労働力不足は補えないからです。
しかし、今、若い女性を中心に新しいムーブメントが起きています。
それはストレスフリ-生活です。
ストレスフリー生活を求める女性たちは、決して後ろ向きな理由でワークライフバランスを諦めたわけではありません。
ここでは、ストレスフリー生活とは何か、若い女性に広がる仕事観を見てみましょう。
目次
働く若い女性の母親像を見てみましょう。
20代女性の母親たちの多くをカバーするであろう40、50歳代の女性の就業率は高まる一方です。1970年代は63%でしたが、2017年の年齢45~54歳女性の就業率は77%に上昇しています。(総務省統計局調べ)
この45~54歳世代は男女雇用均等法が定められた時代に就職をしています。
男女平等の仕事をリードしてきた世代の娘たちが、この20代女性です。
仕事を持つ母を見て育っているので、就業するのはごく自然な流れです。
実際、30年前の25歳~29歳の女性の就業率が50%程度だったのに対し、今は80%以上の女性が就業しています。(総務省統計局調べ)
しかし、内閣府が発表した「男女共同参画社会に関する世論調査」(平成28年度)にあるように、
Q,あなたは社会全体でみた場合には,男女の地位は平等になっていると思いますか。
男性の方が優遇されている 74.2%
平等 21.1%
女性の方が優遇されている 3.0%
Q,一般的に女性が職業をもつことについて,あなたはどうお考えですか。この中から 1つだけお答えください。
・子供ができても,ずっと職業を続ける方がよい 54.2%
・子供ができたら職業をやめ,大きくなったら再び職業をもつ 方がよい 26.3%
・子供ができるまでは,職業をもつ方がよい 8.4%
・結婚するまでは職業をもつ方がよい 4.7%
・女性は職業をもたない方がよい 3.3%
日本の女性たちは、働きたいという意欲が高く、ライフステージが変わっても仕事をしていたいと願っています。しかし、社会がまだ男性優位であることにヤキモキしています。男性もまた、男女平等の時代になって欲しいと、女性の就労には賛成している人が大多数いるのです。
男性優位の閉塞された社会にも関わらず、20代女性が働きたいという気持ちの原動力は何でしょうか?
ELLEに面白い記事が載っています。
出展:ELLE
JWTグローバルで実施のWomen Index調査”日中米英印等9カ国(2018年)14カ国(2016年)/18~70歳女性各国500人/人口による年齢割付/オンライン調査
「あなたにとっての人生の成功とは何か」という質問に、20代女性はこう回答しています。「健康であること」が44%と一位ですが、2016年から18年の増減で見てみると、増えたのは「ストレスのない生活」「夢や情熱を追いかける」「仕事・キャリアを持つ」といった内容でした。
一方、2016年から2018年の減少率の高い回答を見てみると、
出展:ELLE
JWTグローバルで実施のWomen Index調査”日中米英印等9カ国(2018年)14カ国(2016年)/18~70歳女性各国500人/人口による年齢割付/オンライン調査
「配偶者・パートナーの存在」「子育て」「家族の面倒」など家族との関係性を重視する項目は減少しているのです。
これは、人生における成功とは、自分自身が健康であること、夢や情熱を持って仕事をすることであって、家族やパートナー含む他者との関係性の中に、達成感や喜びを感じる価値が減ってきている女性が増えてきているということです。
就業により、経済的に自立した女性は、他社に依存することなく生活できます。そのため、より自身の成長や夢を追い、生きがいを求める傾向にあります。
また、インターネットが日常にある生活の中で、SNSに疲れを感じているのもこの若い世代です。
SNSでは、何を書いても叩かれてしまう、妬まれる、相手の幸せを素直に喜べないなど、心に影を落とします。常に他者の視線を気にしながら、マウンティング、カーストなどが存在し、ストレスを感じているのです。
それが、「ストレスのない生活」が増加率ナンバー1になった要因です。
2位「夢や情熱を追いかける」
3位「仕事やキャリアを持つ」
増加率上位を見てわかるように、自分に自信を持ち、自身の価値を確立させたいという志向が数字でも裏付けられています。
2018年の項目を見ると「ストレスのない生活」が32%、「バランスのとれた生活」が20%となっているもの注目してください。バランスのとれた生活よりもストレスのない生活を求めているのです。
今の20代女性は仕事に夢や情熱を持って生きているので、ワークとライフを分けて考えていません。
仕事と家事、育児のバランスをとることが、その人の「幸せ」に直結するわけではなく、仕事に情熱を持って取り組むことで感じる達成感や満足感で「幸せ」を感じるようになったのです。
バランスという概念よりも、ワークがすなわちライフになるのです。
一方で、目標や情熱を持って仕事に挑むということはストレスを感じることもあります。
仕事とは、自分一人で成り立つものはなく、周りと共存するものだからです。
そのことを、今の女性たちは知っています。
単にのんびりとストレスフリーな生活を求めているわけではなく、仕事を頑張るためにストレスは最小限にしたいと思っているのです。
今20代女性が求めているのはワークライフバランスじゃなくて、ストレスフリーライフなのです。
20代の女性たちが、仕事に邁進したいなか、さらなる障壁に感じているのが、未来の子どもです。
出展:ELLE
※子供をもっていない女性18-49歳が「今後子供ををもうけない、もうけるかどうかわからない」と回答した理由(年代別) JWTグローバルで実施のWomen Index調査”日中米英印等9カ国(2018年)14カ国(2016年)/18~70歳女性各国500人/人口による年齢割付/オンライン調査
「子供がいることで制約されたくない」「仕事やキャリアに専念したい」の項目が20歳代は高いのがわかります。
もちろん、子どもをつくらないのは、まだパートナーがいないことが一番の理由ですが、自分の夢や情熱に、子どもが歯止めになってしまうことへの不安があるのです。
それは、周りの少し上の世代の女性が、出産・育児によって夢を諦めているのを見ているから、子どもを抱える女性を取り巻く現状に積極的に自分も飛び込もうと思えないから、などの理由が考えられます。
先ほどのストレスフリーの生活を求めるのも、これからの家族設計への不安があることがわかります。
日本は働き方改革をすれば労働者が増え、生産性も上がると信じています。
そのためにワークライフバランスを重視し、より働きやすくなるよう社会に働きかけています。
しかし、若い女性が真に欲しているのはワークライフバランスではなく、ストレスフリーの生活です。
彼女たちも人生を歩んでいく上で、仕事への情熱よりも、家族との時間、子どもとのより多くの時間を求めることもあるでしょう。
その時、その時の情熱のベクトルが変化しながらも、幸せを求め、クネクネ回り道をしながら生きていくのが人生です。
女性が仕事か家庭かの二択を迫られる社会ではなく、その時に寄り添ってサポートできる社会になってほしいですね。