春からスタート!有給休暇の取得義務化について
2019/2/6
皆さん、有給休暇をきちんと消化できていますか?
「職場の雰囲気で取りにくい」「仕事が溜まりそうで休みたくない」「そもそも、有給休暇がありますと会社から言われたことない」
さまざまな理由で平成29年の年次有給休暇の取得率は51.1%となっています。
しかし、2019年4月からすべて企業に「年次有給休暇の取得義務化」がスタートし、違反した場合は最大30万円の罰金が科せられます。
これは休みにくいとか言ってる場合ではないですね(嬉しい!)
国が定めた新しい法律「有給休暇の取得義務化」について詳しく見てみましょう。
目次
「年次有給休暇」(以下、有給休暇と表記)とは労働基準法で定められた労働者に与えられた権利であり、心身ともにリフレッシュを図ることを目的としています。その名の通り、賃金が支払われる休暇です。
①半年間継続して雇われている
②全労働日の8割以上を出勤している
この2点を満たしていればアルバイト・パートなど雇用形態に関わらず年次有給休暇を取得することができます。
付与日数については以下のようになっています。
通常の労働者の付与日数
週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数
出典:厚生労働省HP
平成29年の有給休暇の取得率は51.1%と18年振りに5割を超えたものの、政府目標である70%には程遠く見えます。
出典:厚生労働省HP
厚生労働省調べでは、有給休暇の取得にためらいを感じるかは
ためらいを感じる22.6%
ややためらいを感じる41.1%
が全体の約64%を占め、
あまりためらいを感じない22.2%
まったくためらいを感じない11.1%
が約33%となっており、倍に近い人が有給休暇の取得にためらいを感じているようです。
その理由は
「みんなに迷惑がかかると感じるから」73.3%
が最も多く、次に
「後で多忙になるから」47.5%
「職場の雰囲気で取得しづらいから」28.2%
と続いています。
以下は、株式会社ワークポートが実施した、全国の転職希望者(20〜40代の男女)480人を対象にした「有給休暇取得の義務化」に関する調査です。
出典:株式会社ワークポートHP
「有給休暇を取ることに抵抗を感じるか」という質問に対しては41.5%の人が「はい」と回答しています。
取得に抵抗を感じる理由は、
「まわりが取得していないから」
「まわりに迷惑がかかる」
「上司や他の社員からのプレッシャーがあるため」
といったものが多かったようです。
有給休暇を取得しやすい空気づくりなど職場環境の改善が急務です。
それに対し、次のアンケートでは勤務先の取り組みについて調査したものです。
出典:株式会社ワークポートHP
なんらかの取り組みを
「行っている」が23.3%
「今後行う予定だと聞いている」が6.7%
と、計30.0%となっています。
取り組みの具体例は、
「年間の取得予定を申告する」
「部下の有給休暇の取得を管理者の成果に加える」
「情報共有を行い休みやすい環境をつくる」
などが挙がっていますが、70%もの職場が取り組みを行っていないという結果になりました。
そして、海外と比較しても日本人の有給休暇取得率はとても低いです。
旅行会社のエクスペディアが2018年に発表した調査結果では、アメリカやフランスを含む世界30か国中で、日本の有給取得率はなんと最下位。一方でブラジル、フランス、スペインでは取得率は100%と、違いは一目瞭然です。
出典:エクスペディアHP
こちらの調査でもわかるように、日本人の性質があるのかもしれません。
出典:出典:エクスペディアHP
休みを取らない理由の1位が「人手不足」というのは今、社会的に問題になっています。しかし、有給休暇をきちんと取得した方が企業イメージが上がり、優秀な人材の確保に繋がるという中期的な見方もあります。
また、有給休暇が年間での計上になるので、「緊急時のために取っておく」というのも納得です。体調不良等での欠勤に充てたいですものね。
3位の「仕事する気がないと思われたくない」は職場にそういう風潮があるのか、休みにくい環境というのが、ここでの調査でもわかります。
そもそもなぜ休暇の取得が必要なのでしょうか?
有給休暇の目的は、労働者に心身ともにリフレッシュしてもらい、仕事へのやる気を養ってもらうことです。結果、仕事の生産性が向上し、企業イメージも向上するという好循環をもたらします。
逆に言えば、有給休暇を取得できないと、労働者はストレスを抱え、仕事の能率が低下してしまいます。職場の雰囲気は悪化し、生産性が落ちる上、残業などのコストは増加してしまうという悪循環になってしまいます。
政府は働き方改革として、時間外労働の上限規制や、高度プロフェッショナル制度を決めました。そして、ワークライフバランスの実現を図ろうと、この2019年4月から年次有給休暇の取得義務化が始まるのです。多くの企業や従業員に一番関係するのがこの制度といえるでしょう。
出典:厚生労働省HP
この制度のいいところは、すべての企業の年10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、有給休暇の日数のうち「年5日」については、会社が時季を指定して取得させることが義務となったところです。
さらに詳しく言うと、有給休暇を取らない社員に対して、会社が強制的に「〇月〇日に休んでください」と指定して有給休暇を取らせることになります。
これは、正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得してなく、このような社員こそ長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえての制度です。
出典:厚労省HP
なお、会社が何もしなかった場合は、労働基準法違反となります。その場合、すなわち最低年5日の年休を取得させなかった場合、従業員一人当たり最大30万円の罰金に処せられます。使用者が時季を指定しなかった場合はもちろん、時季を指定したにもかかわらず労働者が出勤した場合も処罰される可能性があります。
つまり、職場の雰囲気も、周りへの遠慮もなく堂々と休むことができるというわけです。
しかし、有休を取れば問題が解決されるわけではありません。
せっかく有休を使ってリフレッシュできても、翌日出社したら仕事は山積み、休んだ日のリカバリーに追われる、という環境では休みたくない気持ちになりますよね。
そうならないために安心して休めるようにするには、休暇中に業務が滞りなく進む仕組みづくりが大切です。
有休取得の促進と働きやすさを同時に進める工夫が求められます。
そこで政府は「休もっ化計画」として、次の職場環境改善を提案しています。
「休もっ化計画1」
仕事はチームで行い、チームの中で情報共有を図って休みやすい職場環境にしよう。
厚生労働省において、1か月程度の特別休暇や年次有給休暇の取得が進んでいる企業にヒアリングを行ったところ、1週間ごとにミーティング等を行い、労働者の業務の進行状況等について、所属長(課長など)のみならず、同僚等も把握し、仕事を個人ではなくチームで行うことで、当該労働者が休暇で不在となっても業務が回るよう取り組まれている状況が分かりました。
各部署において、労働者個々人がしっかり仕事をすることは重要ですが、仕事をチームで行い、チームの中で仕事の進行状況等について情報共有することで、休みやすい職場環境にしていきましょう
「休もっ化計画2」
年次有給休暇の「計画的付与制度」を導入しよう。
年次有給休暇の計画的付与制度とは、年次有給休暇の付与日数のうち5日を除いた残りの日数について、労使協定を締結する等により、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。この制度を導入している企業は、導入していない企業よりも年次有給休暇の平均取得率が8.5ポイント(平成28年)高くなっています。この制度を導入することによって年次有給休暇が取りやすくなると考えられます。
春からの有休休暇の取得義務化で、休むことへの意識が高まることが予測されます。
しかし、頭の固い上司が休むことに難色を示したら?
周りのみんなに「すみません」と謝って休む?
などと悩んでいてもストレスが増すだけ。
働き方が多様化していく中、休むことが下手な日本人は、上手に休むスキルを今、身に着ける必要があります。
最初は勇気がいることと思います。
「明日は有給休暇」とわかっていたら、仕事を今日中に終わらせるための工夫が生まれます。それが周りに伝わり輪となることで、仕事の効率化に繋がります。
自分の勇気が働き方改革になり、職場に休むのが当たり前の雰囲気が流れていくはずです。
春からの働きにわくわくしますね。
半数以上の人が知らない年次有給休暇取得義務化。
今までの長時間労働当たり前、休むなんてありえないという社会から、しっかり休んで、しっかり仕事しようという流れを作る休み方改革の法になります。
どうか働きすぎの過労死がない社会、イキイキと働ける社会になりますように。
皆さん、お休みを満喫してくださいね。