アンコンシャスバイアスとは?それがあなたの働き方を狭めている原因かも
2019/3/4
「女性は管理職に向かない」
「子どもを持つ女性は育児家事に忙しいから出張させてはかわいそう」
「女性は細かいところまで気がつき心遣いができる」
など思い込みを持っていませんか?
近年、働き続ける女性は増えましたが、管理職の登用は遅れが目立ちます。
その原因となるのが、誰にでもある「無意識の偏見」です。
アンコンシャスバイアスと呼ばれる知らず知らずの思い込みが、あなたの働き方を狭めています。それはなぜでしょうか?詳しく見てみましょう。
目次
アンコンシャス・バイアスunconscious biasとは、日本語で「無意識の偏見」「無意識の思い込み」と訳される概念で、自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏りのことをいいます。
「bias」という言葉の意味は先入観や固定概念、思い込みを根拠に”深く信じこむこと”です。人種差別、男女差別など悪意があるもの以外は「偏見」というより、「思い込み」の方が適しているかもしれません。
アンコンシャスバイアスとは考えるより瞬時に判断することであり、誰もが何らかのアンコンシャスバイアスを人間の機能として持っています。例えば、
「雷はこわい」
「ヨーロッパではスリが多いから気をつけよう」
などです。実際に雷に打たれたことはないでしょうし、スリの被害にあったことはないかもしれません。しかし、このようなアンコンシャスバイアスがあるおかげで、雷が鳴ったら建物の中に避難して無事だった、ヨーロッパではバッグを肌身離さず持っていたのでスリの被害にはあわなった、と適切な行動をとることができるのです。
問題はそのような無意識の思い込みが相手に影響を与え、ネガティブに作用することにあります。例えば
「シニアはパソコンが苦手」
「外国人は時間にルーズでよく遅刻をする」
といったステレオタイプの思い込みは、アンコンシャスバイアスとなります。
シニアはパソコンが苦手だろうからマニュアルを作り仕事をしてもらおう、外国人は遅刻のないよう5分前に行動してもらおうなど、具体的な対策をとるならまだいいでしょう。
しかし、「だからシニア層を、外国人を採用するのをやめよう」
となると差別となります。
パソコンが得意なシニアもいれば、時間通りに行動する外国人ももちろんいます。にも関わらず、最初から決めつけて判断するのは、相手に対してはもちろん自社にも損失となります。
固定概念や、ステレオタイプは自分の内にあるもので、表に出さなければ問題となりません。しかし、人は物事を自分の中にあるものさしで計り、行動してしまいます。それらはネガティブな影響を及ぼし、差別を生んでしまうのです。
「女性は細やかな気配りができて世話好き」
と先入観を持っているとします。すると、オフィスで女性社員ばかりに雑用を頼んでしまいます。頼まれた側は偏見を持たれたと感じるし、頼んだ側はもし断られたら”期待を裏切られた”と感じてしまいます。この積み重ねが関係性やお互いの評価をゆがめます。
また仲間意識・よそ者意識もアンコンシャスバイアスです。
日本は島国ですので、この意識は強いといわれます。
職場で自分と同じ出身地・出身大学の人には仲間意識が芽生えます。その上司から頼まれたらNOとは言えない、または部下だったら評価が甘くなる、など影響を与えます。
同様に、自分と同じチームに所属するメンバーには親しみを感じ、それ以外のメンバーには警戒心や敵対心を感じるといったケースもこれに当たります。
親しみを感じ、成果が上がるようならいいでしょうが、反対に警戒心、敵対心といった見方は不毛です。仕事に支障をきたすアンコンシャスバイアスの一種です。
女性活躍推進が思うように進まないのは女性へのアンコンシャスバイアスが考えられます。
アメリカのオーケストラの有名な話があります。
1970年代に「男性比率95%」という超男性社会の業界だったアメリカのオーケストラが変革を起こし、楽団員の採用方法を変えました。
音大を卒業する女性は多いにもかかわらず、楽団員はほぼ男性。その状況に問題意識を持った楽団が試したことはブラインド・オーディションでした。
オーディションを行う前、演奏者と審査委員の間にスクリーンを置き、性別をわからなくしたのです。演奏者が見えなければ、審査員は音だけで評価することになります。
その結果、女性の合格率がなんと50%も上がりました。
1970年に5%だった米国オーケストラの女性比率はその後確実に増え続け、現在40%となっています。
この衝撃的な調査結果は世界でも語り継がれており、無意識の偏見(アンコンシャスバイアス)への関心を大きく高める要因ともなりました。ブラインド・オーディションが、偏見を目に見えるものとしたからです。
引用:Fobes JAPANより
バイアスは私たち自身の能力の見方をゆがめています。
男性の能力は男性というだけで実際より高く見え、女性の能力は実際よりも低く見えるように働くため、男性を有利にする分、女性を不利にする傾向があります。
これは昨年問題となった大学医学部合格不正操作でも明らかです。
バイアスによって男性は過大評価され、女性は過小評価されるため、男女が同じ能力だと、男性が合格し、女性が不合格になる。
女性は才能、努力が報われないし、男性は過大評価により後に苦しむことになるでしょう。
働く場においての女性へのアンコンシャスバイアスは他にも多く存在します。
「育児中の女性に時短勤務を認めるのは子どものいない女性に対して不公平」
「既婚女性や育児をしている女性に出張を頼むのはかわいそう」
「既婚女性や育児をしている女性には会社の飲み会を誘わないほうがいい」
「女性は気遣いが上手だから、接客に向いている」
など、思い当たる節はありませんか?
本当は出張、飲み会に参加できる状況なのに、周りが「あの人はああだから」と決めつけるとその人のチャンスを奪ったり、傷つけてしまうこともあります。
女性だから〇〇という先入観はほぼアンコンシャスバイアスでしょう。
仕事や機会はジェンダー関係なく平等に与えられるべきです。
世界経済フォーラム(WEF)による男女格差の度合いを示す「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」2018年版で、日本は149カ国のうち110位でした。なんと先進国最下位です。
労働時間、両立問題など女性活躍を妨げている要因はあるでしょうが、この女性へのアンコンシャスバイアスがなくならない限り、働き方改革は成功しないでしょう。
ダイバーシティとは多様な人材を積極的に採用しようという考えです。
一般的に企業内で外国人や、女性などさまざまな人種や属性のひとが働くことと捉えられていますが、それだけではなく能力や経験、さまざまな知識や価値観を持った人が一緒に働くことも含まれます。
ダイバーシティで、さまざまな人が意見を交える中でイノベーションが生まるのです。
企業の発展はダイバーシティなしでは望めません。それはどの企業も一致した意見でしょう。
しかし、ダイバーシティを妨げるアンコンシャスバイアスは存在します。
「子どもが産まれたので育児休業を申請したら、上司が眉をひそめた」
「ゆとり世代はガッツが足りない」
「パート勤務の人は言われたことだけやればいい」
「外国人は言葉が難しいだろうから会議は出なくていい」
などのアンコンシャスバイアスは働き方の多様化を妨げています。
ダイバーシティの実現が遅れることは、これからの社会において企業の損失となります。
人手不足に悩んでいる企業が多い中、アンコンシャスバイアスは解消しないといけない問題です。
差別を含むアンコンシャスバイアスは悪だと認識する一方、配慮が必要なケースもあります。
「電車に座っていて、お年寄りの方が立っているけど、お年寄りだから座りたいと思うのはアンコンシャスバイアスなので席を譲らなかった」というのは思いやりがありませんね。
この場合、「お席いかがですか?」と一言のコミュニケーションでいいですね。
また、先に挙げた例の
「既婚女性や育児をしている女性に出張を頼むのはかわいそう」
その女性が他に留守を任せることができる環境だとして、出張に行きたいとなると仕事を奪ってしまうことになります。しかし「今は子どもと一緒にいたいから出張を頼まれなくてよかった」と思うかもしれません。
配慮が不要なのではありません。
会社として、「育児中の女性に出張は頼まない」といった画一的なルールが不要であって、
個人がどう考えているか聞くことを必要としているのです。
つまり、コミュニケーションを常日頃からとり、相手の考え、意識をお互いに知ることがとても重要になります。
上の場合、「出張の仕事があるけどどう思いますか?ご家庭の事情もあるでしょう。どうしたいですか?」と事前に相談するといいでしょう。
まず、アンコンシャスバイアスというものを誰もが持っているという意識をすること。
無意識を意識することです。
それを踏まえ相手とコミュニケーションをとるだけで、フラットな気持ちで接することができるはずです。
公正な評価がされ、社員が伸び伸びと自身の力を発揮できる環境。これが企業の成長に繋がるでしょう。
日本人は思いやりや心遣い、気遣いが美徳とされている文化なので、相手の考えを先回りし読む傾向があります。それがおもてなしの文化に繋がるので誇らしいことだと思います。
しかし、勝手な思い込みは働き方を狭めます。大切なのは、知らず知らずのうちに自身に存在するアンコンシャスバイアスを自覚すること。その上で意識してコミュニケーションを取ることです。あなたの働き方が広がるかもしれません。