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鍼灸とは?

鍼灸とは?

2020/4/21

ストレス、アレルギー、慢性疲労などのトラブルや生活習慣病が蔓延してきている現在。

薬物投与や外科治療で対処してきた西洋医学では治せない、病気ではないけれど「何となく不調」を訴える人が増加しています。

慢性疲労社会のなかで、古くからの医療が見直され始めていますが、なかでも東洋医学の中核を成す治療法「鍼灸(しんきゅう)」とは、いったいどんなものなのでしょうか。

 

目次

1、鍼灸とは?

東洋医学は人の体を全体としてとらえ、全人的に治療しようとするものです。

パーツでなく、全体を治す。

この考え方に基づいて、経絡や人の体に約361あるといわれる経穴(ツボ)に、鍼や灸を用いて刺激を与え、自分の体に備わっている自然治癒力を高めるのが鍼灸治療です。

つまり、体全体のバランスを健康な状態に戻そうとする医療とも言えます。

近年、未病治(病気になる前の細かな身体情報を基に病気の予防や治療を行うこと)の考え方が広まる中、世界各国の医療関係者やWHO(世界保健機関)などが鍼灸に注目し、メカニズムの研究も進められ、科学的根拠のある治療法として注目されています。

 

1-1、鍼灸で使われるツボ・経絡って何?

東洋医学では、人間の身体の中に、 「気」=「生命活動の源となるエネルギー」が流れる川(あるいは道)が14本流れていると言われています。

その流れている川(道)を 「経絡(けいらく)」と呼びます。 

その経絡の中に、身体の反応点というものが点在しています。それを 「経穴(けいけつ)」言います。その一般名称が 「ツボ」です。 

人間の体には360個以上(WHO公認361個)ものツボがあると言われています。

 このツボに気が滞ってしまうと、人は病気になると考えられてきました。

ツボを押すのは、経穴を刺激して、全身にエネルギーをめぐらせている川の流れをスムーズにするためです。

 

1-2、鍼灸の歴史

鍼灸の歴史は大変深く、紀元前の中国ではすでに鍼治療が広く流行したという文献も残っており、約2000年以上の長い歴史がある伝統医学です。

日本では奈良時代に中国の僧侶が仏典とともに鍼灸の医学書を携えてやってきたとされています。

平安から室町時代にかけて、鍼灸や漢方といった中国医学が日本社会に定着し、江戸時代に入ると、鎖国の影響もあり、鍼灸は日本の伝統医学として独自の進化を遂げて庶民にも広まったとされています。

その後、医学界に大きな影響をもたらした「解体新書」が登場し、明治政府の方針で西洋医学が強く推し進められることになり、鍼灸や漢方などを主流とする日本の伝統的な医学は下火を迎えますが、その後も民間での支持は強く、鍼師、灸師は国家資格として制定されることになりました。

 

戦後には現在の「あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師などに関する法律」の原型である法律が制定され、日本の鍼灸はより科学的な裏付けが強く求められるようになり、研究も学会レベルで進められるようになりました。

 

日本の鍼は、中国の鍼と異なり非常に細い鍼を用いています。

太い鍼の方が効果があるとされていますが、その代わり痛みが強いのが特徴です。

痛みに敏感な日本ではあまり普及せず、杉山和一という人物が考案した管鍼法という、細い鍼と管を組み合わせた鍼治療が一般化して現在に至っています。

 

1-3、鍼灸の治療

「はり」と言うと、注射針のような怖い印象がありますが、鍼治療に用いる鍼は、注射針や裁縫用の針よりももっと細く、成人の毛髪くらいです。

注射針の太さが約0.7~0.9㎜に対して、鍼灸でよく使われる鍼は0.14~0.34㎜と注射針の約3分の1の太さ。

刺したときに皮膚の抵抗が少なく、痛みもほとんどありません。

また、皮膚や血管を破るために先端がナイフのようにカットされている注射針に対して、鍼灸の鍼は皮膚や筋繊維の間をかき分けて入るように、先端が丸みを帯びているため、刺しても痛みはほとんどありません。

また、最近では感染症防止のためにディスポーザブルの鍼(1回使い捨ての鍼)を使用している鍼灸院がほとんどですので、安心して治療が受けられます。

 

灸は皮膚の上に艾(もぐさ)を置き、火をつけることで、熱を用いてツボを刺激します。

艾(もぐさ)の原料にはヨモギの葉の裏にある繊毛が使われており、艾(もぐさ)の大きさや硬さによって熱さは変わります。

近年ではせんねん灸などの普及で、自分でお灸ができる「セルフ灸」が流行っています。

また、デザインがかわいいお灸やアロマ効果のあるお灸、火を使わないお灸なども登場し、「お灸女子」という言葉も生まれて、注目を集めています。

写真出典・https://crea.bunshun.jp/articles/-/12588

 

 

鍼灸の施術の方法は、古来より診断、治療等について、いろいろな流儀がありますので国家資格を持った鍼灸師が各々の方法で行っていきます。

 

 

2、鍼灸の効果

鍼灸は、「肩こり、腰痛」といった従来の鍼灸の効果のイメージにとどまることなく、

頭痛・生理痛・歯の痛み・自律神経の乱れ・冷え症・疲労・倦怠感・便秘・不眠・胃もたれ・眼精疲労・花粉症・更年期障害・生理不順など、様々な症状への効果が期待できます。

 

2-1、世界に普及している鍼灸治療

民間療法的に定着していった鍼灸治療ですが、ここ数十年の間に鍼灸治療も含めた伝統的な医学は世界に普及し、現在では世界中で研究と実践が進められている普遍的な存在へと変貌を遂げています。

 

1979年にはWHOは鍼灸治療の適応疾患43疾患を発表し、2001年には大学病院での医学部教育課程に東洋医学が取り入れられるようになるなど、もはや民間療法ではない正式な医療としての役割の重要性は日に日に高まっています。

 

西洋医学が、病気の原因である細菌やウィルスの根絶や患部を回復させることに主眼を置いている一方、東洋医学は「身体の免疫力を高める」ことを主眼にしています。

ストレス、さまざまなアレルギー、慢性疲労など不定愁訴と言われる現代社会特有の疾患が増えてきている現在、西洋医学よりも副作用が少なく、また原因がはっきりしない症状や慢性的な症状に効果があることが明らかになり、東洋医学を治療に取り入れる医療機関も年々増えています。

 

2008年にはWHOによって、ツボの名称や経穴の位置が統一され、ますます鍼灸治療は世界標準として必要不可欠なグローバル医療としての地位を確立しつつあります。

 

 

<WHO(世界保健機構)が鍼灸療法の有効性を発表した症状>

神経系疾患           神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症

 

運動器系疾患         関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、捻挫)

 

循環器系疾患         心臓神経症・動脈硬化症・高血圧症・低血圧症・動悸・息切れ

 

呼吸器系疾患         気管支炎・喘息・風邪および予防

 

消化器系疾患         胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾

 

代謝内分秘系疾患    バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血

 

生殖、泌尿器系疾患   膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・ED

 

婦人科系疾患         更年期障害・乳腺炎・おりものの異常・生理痛・月経不順・冷え性・女性ホルモンの変動にともなう不定愁訴・不妊

 

耳鼻咽喉科系疾患    中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎

 

眼科系疾患            眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい

 

小児科疾患            小児神経症(夜泣き、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

 

 

2-2、鍼灸治療がもたらす作用

鍼灸の効果がでる仕組みのメカニズムの詳細は、すべて明らかになっているとは言えません。

しかし、鍼灸治療はさまざまな臨床と研究が重ねられ、そのエビデンス(根拠)が明らかになりつつあります。

主に下記のような作用が働くことで、効果がでるのではないかと考えられています。

 

2-2-1、血行促進作用

肩こり、筋肉痛、動脈硬化などの治療では、血管を拡張させ、血行を促す働きが起きます。

また、関節炎などの炎症においては、患部に集まっている血液を健康な部分に移動させることで、炎症を鎮める作用が起こります。

 

 2-2-2、免疫力の活性化作用

白血球を増やすことで、生体防御機能が高まり、身体全体の免疫機能を活性化させる働きをすると考えられています。

また、血行促進作用、生体機能調整作用によりガンや感染症にかかりにくい体質づくりにも役立つと考えられています。

 

 2-2-3、生体の恒常性(病気を自然に回復させる作用)・痛みを抑える作用

疼痛やけいれんなどには、鎮静作用により、機能が異常に高まっている状態を抑える働き、また、痺れ、運動麻痺といった神経や臓器の機能低下では、興奮作用により働きを活発にするというように、組織や期間の機能を回復させる作用が、症状により異なる働き方で起こることがわかっています。

 

3、鍼灸の保険適用

3-1、鍼灸の保険適用

鍼灸治療で保険適用されている疾患は以下の6つがあります。

  • 神経痛 (坐骨神経痛など)
  • リウマチ (急性、慢性で各関節が腫れて痛むもの)
  • 腰痛症 (慢性の腰痛、ギックリ腰など)
  • 五十肩 (肩の関節が痛く腕が挙がらないもの)
  • 頚腕症候群 (頚から肩、腕にかけてシビレ痛むもの)
  • 頚椎捻挫後遺症 (頚の外傷、むちうち症など)

 

鍼灸院で保険適用を受ける場合は、まずその病気に関して医師の治療を受けている必要があります。

また、保険で鍼灸を受けている期間は、その病気に関してのみ、保険適用では病院にかかれません。

例えば、鍼灸院で保険を使いリウマチの治療を受けている時に、病院で保険を使いリウマチ治療を受けることはできません。

ただし、実費でなら病院でリウマチの治療も受けられますし、もちろん他の症状の治療は病院で保険を使い受診できます。

他にも細かい注意事項があることと、鍼灸院によっては保険適用を実施していない店舗もありますので、保険適用を考えている場合は、各々の鍼灸院に問い合わせをしてみてください。

 

3-2、鍼灸治療の医療費控除

意外と知られていませんが、鍼灸治療は医療費控除の対象となっています。

医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日にまでに納税者本人と配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、一定の金額が所得控除を受けることができる制度です。

ただし、疲れを癒す、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。

また、疾病治療の目的であっても、税務署によっては病気を治す目的で通院しているという証明書(医師の診断書)の提出が必要な場合もあります。

詳しくは、国税局や税務署などで確認しましょう。

 

 

4、広がる鍼灸の活用分野

4-1、スポーツ鍼灸

鍼灸はスポーツの分野でもその効果を発揮しています。

ケガをしたアスリートに鍼灸治療を行うことで、故障した箇所の痛みを軽減し、また手術後のリハビリテーションで鍼灸治療を取り入れることでスポーツ現場への復帰を早られるとして認められてきています。

また、日々の練習や試合などによる疲労を回復したりすることを、さらには競技能力の向上目的としても鍼灸治療を取り入れることも多くなってきています。

一般の健康な人に対してもコンディションを調整し、健康な日常生活を過ごすためにも鍼灸治療は有効です。

 

4-2、美容鍼灸

エステや美容外科など様々な美容法がある中で、最近注目を集めているのが美容鍼です。

テレビや雑誌などのメディアでも多く取り上げられていたり、芸能人やモデルさんが顔に鍼を打った写真をSNSにアップしているのを目にすることもあるかもしれません。

例えば、リフトアップ、小顔、たるみ、くま、ほうれい線、シワなど様々なお悩みにアプローチできますし、何より身体の中から健康的に美しくなれることが特徴です。効果を実感しやすいことも注目される要因かもしれません。

 

4-3、癌と鍼灸

アップル社の最高経営責任者(CEO)だった故スティーブ・ジョブズ氏は、生前、鍼治療を取り入れて膵臓がんと闘っていました。

ベストセラーとなった自伝『スティーブ・ジョブズⅠ・Ⅱ』によると、ジョブズ氏は手術を受けながらも、鍼治療や食事療法といった代替医療を続けたとされています。
癌治療において鍼治療は、癌そのものを無くすためではなく、鎮痛剤では取り切れない痛みなどを軽減させるなど、生活の質(QOL)全般の改善を目的として、西洋医療を補完する効果が求められています。

 

4-4、ペットと鍼灸

今や家族の一員として重要な存在となっているペットへの鍼灸治療にも関心が寄せられています。

世界の様々なメディアで、獣医分野での鍼治療がペットの代替治療として積極的に取り入れられている動きが紹介されているのです。

実は、昔から乳牛や豚などの家畜、鷹狩用の鷹、競走馬などにも鍼灸治療が行われており、現在では犬や猫などペットへの鍼灸治療も行われています。

ヒトへの鍼灸治療以上に発展途上の分野ではありますが、これからさらに研究が進み、今後は飼い主とペットが一緒に鍼灸を仲良く受ける日もくるのかもしれません。

 


この記事を書いた人 土田 香織 CORE Studio 麹町 代表

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